約10万人が犠牲になった東京大空襲から65年を迎えた10日、在日朝鮮人で出版社「一粒出版」(東京都北区)代表の金日宇(キム・イルウ)さん(59)が「東京大空襲・朝鮮人罹災の記録PART3」(1680円)を発売した。朝鮮人の被災実態を包括的にまとめた書籍は例がないという。朝鮮人死者は推定1万人超との指摘もあり「日本人の隣にいた朝鮮人の実態に目を向けてほしい」と訴える。【森禎行】
金さんは朝鮮人被害者37人の証言をまとめ05、07年にPART1、2を出版。今回はさらに8人の証言と日本人研究者4人のリポートを加えた。被害の大きかった下町の生存者は貧しかったため大半は戦後すぐ帰国し、被災者の手がかりは非常に少ないという。朝鮮人が集まる会合を探し証言を集めた。
空襲体験談では、東京都江東区で用水おけの中に夜間うずくまり助かった女性の話などを掲載した。この女性の家族7人のうち5人が死亡したという。日本へ移住した経緯も聞き取り、金さんは「植民地政策を背景に生活の糧を求めてきた人が多い」と分析する。
東京大空襲での朝鮮人被害は記録が少なく、全容は不明だ。ただ朝鮮植民地政策を調べる民間団体の李一満(リ・イルマン)事務局長は「東京での朝鮮人戦災者は4万1300人との記録がある。東京大空襲では、被害が大きかった下町に密集して住んでいたため、死者は少なくとも1万人を超す」と推測する。
本についての問い合わせは一粒出版(03・6279・3356)まで。
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